オリンピックのエンブレムで考えたこと

五輪エンブレムが最近話題になっており、ちょうど今日、記者会見があったようですね。
会見を聞いていて色々思うところがあったので、勢いで記事を書いてみます。

記者会見の様子はこちら

パクリ問題については、シンプルな形であればあるほど、似てくるのは仕方がないことかなと思います。

例えば、9マスの方眼紙の中に●とTを使って何か書いてと言われたら何人かはかぶったアイデアが出ると思います。
制作意図を聞かされず、形だけでみると似てると思う人はたくさんいると思います。

そのあたりは、完成形の形だけをみるのではなく、そこに至った経緯に注目し比較していくのが大事かなと思います。

個人的にはパクリだったのかどうかということよりも、
・ロゴがださいから作りなおしてほしい、
・ロゴがきらい
という声の方が私はちょっと気になりました。

ネットなので、特に自分の考えがはじめからあったわけでなく、周りがそういう空気だから言っている人や、軽いノリで書いてる人もいると思います。
また、ロゴ以外にも競技場のことなどの騒動もあり、いつもより厳しく意見は出やすいこともあると思います。

でも、わりとまじめに第一印象の見た目の好き嫌いだけで判断してるような意見はやはり少し気になりました。

Facebookなどで招致のときの桜のロゴのほうが好きだからあっちにすべきなど書いてる人もいました。

オリンピック・パラリンピック招致ロゴ

このロゴは私も、はじめてみたときとてもかわいらしいロゴだなと思いました。
そして、今回発表されたエンブレムはこちら。

五輪公式エンブレム発表 東京の「T」、多様性の黒

少し複雑なモチーフがあるものと造形がよりシンプルな少し複雑なモチーフがあるものと造形がよりシンプルなもの。

最近の日本のロゴは複雑なイラストタッチのものや鮮やかな色のものが多く、好まれるように思います。
私もなんの情報もなくどっちのロゴがすき?とただきかれたら、きっと招致のさくらのロゴの方を選びます。
でも、どういったときに、どういう思いで使われるのか、そのロゴの展開などの情報を聞いてからだったら、答えは変わるかもしれません。

今回のロゴは1962年の東京オリンピックで亀倉雄策さんが作成したものに影響を受けてます。

以前、東京の展覧会に言った際、たまたま、東京オリンピックの展示に行くことがありました。
そもそも、別の展覧会をメインに行ったのですが、同じ館でたまたま別の展示もやっていたので、せっかくだし見てみようというかんじでふらっと立ち寄っただけのものでした。
でも結果、それが想像以上に楽しくてドキドキしたのを覚えています。

展覧会でも見たオリンピックのポスターはとても有名で、教科書にも載ってました。
はじめてオリンピックのポスターを大学の教科書でみたときは昔はこういうデザインだったんだな、とかこういうデザインがデザインの世界では評価されているのかと思っていました。
当時のことは全然しらないので、パッと見たときの印象としては古い、昔のデザインという印象。

でも展覧会では、当時の時代背景や、ポスターをつくったときなどの裏話、東京オリンピック用に作られたピクトグラムと合わせたサインが、その後今のサインシステムの基板となっている話などをいろいろなことを知っていくうちに、当時のたのしいようすがなんとなく伝わってきた展覧会でした。
ここから日本のデザインは大きく変わっていったということがわかる展覧会でした。

そういった当時の時代背景を知った上でみた亀倉さんのポスターは、教科書でみてたものとは全然違ってみえたのがとても不思議な体験でした。
古臭かった印象が、力強く、とても魅力的なポスターに見えるように変わった瞬間で、知っている情報によってここまで見方が変わってしまうのかと、自分でも驚きました。

デザインというのは見た目だけで判断するのはとてももったいないと思います。
デザイン単体はとてもシンプルなものかもしれませんが、実はその中には目には見えない情報もたくさん持っていたりします。
そういったことを知っていくことで、以前はそこまで興味が持てなかったものでも、突然それが好きに変わってくる不思議な力があると思います。

今回のオリンピックのロゴも発表された時は、シンプルな形のあまり、第一印象では正直へぇ〜というかんじでした。
そのときは、まだ良いかどうかの判断基準ができない段階だなと自分でもなんとなく感じていました。
そして実際に、そのロゴを作った思考や、映像、他のアルファベットの展開をみていくうちに、ああこのロゴすごくいいなと私の中で気持ちがかわりました。

イラストタッチのロゴであれば、万人受けはするとは思うのですが、こっちのロゴのほうが、汎用性はあるなとか、選手とロゴを合わせてデザインしたとき、目を向けてほしい選手を引き立たせるような、前に出しゃばらないロゴだなとかちょっと良い部分も見えてくるようになりました。

招致の時のロゴは、見た瞬間かわいいと思えるロゴでしたが、オリンピック選手がいままで重ねてきた努力であったり、関係者の思いであったり、そういった中での緊張感を表現するのであれば、佐野さんのロゴのほうが良いかなと思います。

そのロゴをどういう場面でどういう気持ちで使うかによって、今まで見えていたロゴの表情がガラリと変わるので不思議です。
今回はロゴのクオリティというよりも、そういった、ロゴに込められた思い等、ロゴ単体からでは見えてこない情報があまり伝わっていなかったのかなという風にも思います。
これは、徐々に小出ししていくということもあったのでしょうが、それでも、あの記者会見が初めての発表の場となったのはもったいないしすごく残念だなと思いました。

招致のときのロゴは、オリンピックを見る人をわくわくさせるもので、今回のロゴはオリンピックの緊張感を表現させるようなものとで、ロゴにおける仕事ぶりが全然違うと思います。
こっちのでデザインがいやだからこっちという話ではないように思います。

あんまり思ってることをうまく書ききれずもどかしい気持ちもありますが、パッと見の印象や個人の好き嫌いで、そのデザインの良し悪しを判断するのは違うように思ったので、今回記事にしてみました。
せっかくの日本でのオリンピックなのに、国内で決まったデザインに対して、ちょっとマイナスな意見が多すぎるので、そういうムードから早く抜け出せたらなと思います。